日本古武道演武大会:鐘捲流メモとソ連侵攻 ニュース記事に関連したブログ

2010/02/09 23:50

 

 

去る27日、日本武道館において、歴史と伝統を持つ古武道の「技と心」を広く一般に紹介し保存、伝承、振興するため、全国各地に伝わる古武道の中から厳選した35派による演武『第33回 日本古武道演武大会』が開催された。

 

幕末維新に活躍した剣術流派では、新撰組の近藤勇、土方歳三、沖田総司を輩出した「天然理心長州藩の桂小五郎らが修めた「神道無念、勝海舟が修めた鹿島神傳直心影薩摩藩の“人斬り半次郎”こと桐野利秋らで有名な「野太刀自顕そして坂本龍馬も修行した「北辰一刀が揃い踏みという豪華な演武内容であった。

 

 

(北辰一刀流の組太刀演武)

 

今回の演武で筆者が初めて一見した流派があった。それは、

「鐘捲(かねまきりゅう)抜刀術」である。

 

 

鐘捲・抜刀の瞬間

 

祖は 鐘捲自斎天正年間(戦国時代)の人で、生国、生没年ともに不明。現在、週刊モーニングで連載中の井上雄彦作『バガボンド』(原作は吉川英治『宮本武蔵』)にも登場した剣豪で、弟子に伊藤一刀斎や巌流島の決闘で有名な佐々木小次郎がいる。

 

派の由来について、演武大会プログラムにはこうある。

 

「天正年間、鐘捲自斎により創始された派で、その道統を継承した中村家は、仙台藩祖伊達政宗に迎えられ、出羽國米沢より、陸奥國台ケ原に移り住んだ。慶長年間のことである。爾来、藩の剣術指南として幕末まで続くが、徳川泰平の世に多くの流派が、時の推移と共に変貌を続けた中で、当流抜刀術は何等変貌することなく少数の門弟に極秘に伝授され、技名を口外しただけで同門の手により暗殺されたほどの厳しい掟をもって幕末に及んだ。七代中村祥三の墓碑に「祥三碌高百石・養賢堂剣術師範・藩主剣術師範」と刻まれている。

 中村家七代で廃藩となり、扶持を離れた八代虎造は家督を弟に譲り、上京して道場を開く。晩年、伊豆伊東に移り昭和十一年六月この世を去った。遺言により五男圭吾が箕裘の芸を継ぎ、伊達藩以来の緘口令が解かれた。圭吾は道統の何処にも現存しない旨を申し残し、道統の継承を星島弘道に託した。」

 

現宗家の楢原正士氏は星島弘道氏の門人。道場は岡山市瀬戸町塩納495にあり、毎週土曜日が稽古日の由。

 

鐘捲流の抜刀術は立業十五本、寝業五本、小太刀十五本、その他に木太刀三十五本の組太刀があったが、現在伝えられているのは立業十五本のみである。

 

私の記憶では、確か三十年前に購読した剣道雑誌『剣道日本』の居合術特集で、上記・星島弘道氏の談話が掲載されていた。由来の補足も兼ねて、何故立業十五本のみしか伝えられていないかを以下に記す。

 

… … … … … … … … … … … … … … … … … … … …

・九代目の中村圭吾氏は当時、満州国新京(今の長春)に在住し、若干の門人に鐘捲を教授していた。

 

・当時軍人だった星島氏が入門したのは昭和十八年、「満州帝国武道会」の公開演武で中村氏の演武を見たためであった。

 

・昭和二十年五月、中村圭吾氏は召集令状を受け関東軍の一部隊に一兵卒として配属された。場所は満州東部、ソ連との国境地帯。

 

・昭和二十年八月、ソ連軍満州に侵攻。中村氏は消息不明となる。氏は鐘捲流の伝書を所持していたが、氏と共に不明となる。

 

・星島氏が教授されたのは立業十五本、これが現在伝わっている。中村氏の消息不明により、寝業五本、小太刀十五本、木太刀三十五本の組太刀は絶伝した。

… … … … … … … … … … … … … … … … … … … …

 

ソ連軍は火事場泥棒的に満州、樺太に侵攻した。当時、関東軍は「無敵」と称されていたが、その実情は主力の精鋭部隊を南方(ソロモン、ニューギニア、マーシャル、マリアナ、パラオ、フィリピン台湾など)へ次々に転用し、頭数だけは揃えたものの到底戦力とならない部隊が大多数であった。

 

かつて巌流島で宮本武蔵と対峙した佐々木小次郎が遣った鐘捲、惜しむらくは赤い夕陽の満州の地に、大部分が消えてしまった。しかしその気迫は今なお、有志の手で受け継がれているのが救いである。

 

そして八月十五日に終戦の詔が下るも、ソ連軍は十七日に千島列島占守島へ不法侵攻。以降、北海道北東部の占拠を目指して北方領土を掠め取ったのである。奇しくも演武大会の27日は、『北方領土の日』であった。

 

(参考)2008/09/01記事

【今月の銘言】領土保全と奪還に必要な気迫

http://tafu.iza.ne.jp/blog/entry/700715/ )

 

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